火打ち谷の峠、松林が朝露に濡れて松葉から輝く滴をおとしていた。空に入道雲の恐ろしげな黒い青い姿が、遙か向こうの山々におおいかぶさっていた。海苔巻きおにぎりを包んだ風呂敷をしっかり担ぎ直して歩き出す。初めて泳いだ安部屋(あびや)の海への熱く…
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