大洋丸航海日誌

大洋丸には大本営から極秘裡に派遣された前島寿英中佐、鈴木英少佐、松尾敬宇中尉らが、船医、高級船員、一等船客に身をかくして乗り込んでいた。ホノルル総領事館書記生として潜り込んでいる吉川猛夫海軍予備少尉や、軍事情報の収集に当たっていた奥田乙治郎副領事らと連絡をとりながら真珠湾太平洋艦隊の動静を探った。大洋丸に出入りできた喜多長雄ホノルル総領事から、調査事項は新聞紙に挟んでわたされたり、軍令部からの97項目の質問への回答は紙コヨリにして渡されたりした。森村正こと吉川猛夫少尉は米国で抑留生活をへて昭和17年8月、交換船で日本に戻るが忍びの者に対する日本側はけっして暖かくはなかった(「真珠湾天皇とニッポン人」光人社1991 p87-88 伊藤一男)