大洋丸文献探索>野口岩三郎記事要約>船上競技練習

(記事要約)
○女子陸上、それからスローイング選手(槍及円盤)のために大洋丸
デッキで練習が開かれる。長いロープをつけた槍や円盤を一日十回位の
割で、太平洋目がけて投げ出すが、船客の喝采を博す練習だ。強い陽射
しに、槍の穂先がギラギラと閃いて、やがてざんぶと荒浪に突込まれる
光景は、陸上の練習でない壮快味である。ジャイアント揃ひは、ボート・
チームだ。旗手はボート選手がよいというのも道理で、あの重い旗は、
普通の選手では待ちきれない。チームは七時からDデッキに集合、体操
の近藤選手を先生として、乗船翌日からデンマーク体操を三十分間練習
している。Bデッキで競歩の練習や、駈歩もある。 八時に朝食だ。そ
れが済むと、十時まで休養。十時からAデッキに集まり、バツク台で猛
練習をする。スライデングとフイツクスの練習。棒引きやランニング、
ウォーキングなどをやつて、汗を拭ふのが十一時三十分。午後は三時か
ら四時半まで、Aデッキで、午前と同じ様な練習をする。握力の練習が
入るのが異る。ボートは体操と同じ位に、猛練習である(「第十回オリ
ムピック大会報告」大日本体育協会 1933 p307 郷隆)
(調査経緯)
●「オリンポスの果実」には、田中英光が女子陸上の選手たちのデッキ
での練習振りを見詰めている視点で、描写されているから、ボートの選
手たちの練習風景はあまりない。そのかわり、女の尻ばかり追いかけや
がって、などといって英光に罵声をあびせたり、あてこする選手たちの
様子が描かれている。この報告書には、大洋丸船上で、バック台で腹筋
を鍛えている選手たちの写真も納められていて、この広告文が小説には
ない練習風景を、伝えている。なお報告書のほかに、船上の様子を記録
した「アスレテックス」という月刊雑誌が昭和7年当時あった。その実
物を見られたのは、巨人軍の東京ドーム地下にある野球博物館に附属の
図書館であった。