大洋丸文献探索>山本茂記事要約>相良八重の死

(記事要約)
○昭和7年、女子走高跳オリンピック選手としてロサンゼルスに遠征時、
大洋丸」に乗船した相良八重と、昭和15年に結婚した広島県三次市
前田嘉市(当時69歳)は、生前ヤンコと呼んでいた愛妻のことを懐かし
そうに記者に語った。あなたは、いったい、ぼくが好きだったのでしょ
うかと書き出され、同じ問いかけで終わる「オリンポスの果実」の著者
への奥さんの返事は、と記者が訊ねる。生前、私、聞いたことがありま
したが、家内は相手の気持ちにまったく気づいていなかったようです。
そういうことには鈍感な性格なんです。あの本が出たとき、だれかから
送られてきて、びっくりしましたからねえ。私も読みましたが、決して
イヤな気はしません。若い人の感傷が美しく、きれいな小説だなあ、と
おもいました。昭和42年4月28日はどしゃぶりの雨だった。心臓発作で
静養の身が、近所で立候補した市議のため出かけた投票所の渡り廊下で
つまずき倒れ、抱き留めた夫の腕の中で息をひきとった。享年53歳。
穏誠院妙法日重大師(「サンデー毎日」1979.6.3 p140 山本茂)