坪野哲久>大学の書記は蛆虫

坪野哲久が山本司作成の年譜(「歌集碧巌」短歌新聞社文庫)のなかで「早稲田大学
理工学部長付書記」となった感想を、小説「鎖」のなかで、もう一箇所書いているのは、
次ぎのようなことである。

○大学の書記は蛆虫みたいなものだ。わからずやの教授と商売上手の学校経営者の両方
からしめあげられ、グウの音もあげ得ない卑屈な存在にされている。学内を動かしていた
かつての力は駆逐され、中身はまるでガラン洞。学生ばかりうじゃうじゃかき集めること
にうつつをぬかし、学園内の盛大を誇示するようなやり方だ。不幸なことには津村のぶつ
かった教授たちは揃いも揃って「尊大なる低能」とでもいうべき部類に属していた。
書記は彼らの下男であることを思い知らねばならなかった。
(「坪井哲久小説集」 石川県志賀町 2006 p105)