大洋丸遭難の目撃者藤波さん


大洋丸撃沈を見て大洋丸乗船から吉野丸乗船に突然変更になって命拾いをした高橋さんと同じ立場の藤波さんはこの時の思いを次のように書き残している。
○夜の闇が迫り五島列島沖の暗い海面にただ一つポツリと光る大洋丸の燃える姿が船尾の遠くにいつまでも見えていた。暗い甲板に立ちつくし私は人間の運命の不思議を思わずにいられなかった。家に残してきた妻や母や子供は、もし明朝の新聞に「大洋丸沈没」のニュースが出ることがあれば、仏壇に燈明をつけて、私の写真を飾るようになるのではないかと思った。(「ニュースカメラマン」中公文庫1980 p208 藤波健彰)