大洋丸航海日誌

大洋丸に乗船した江商組ただ一人の生存者としてご遺族の弔問・葬儀に参列した。乗船を控えて慌ただしく華燭、新婚ほやほやの笠井未亡人、同じく新婚の三上未亡人の目も当てられぬ慟哭、母一人子一人で育て上げ、僅か一週間前に盛大に見送りをして、今聞く訃報に信じられぬ思いの寒川君母堂は、同年の私が彼の命をとったのではないかと疑うような眼差。肝つぶれるような思いを、軍国の父として平然とした表情で世間話に紛らせる方々。その悲嘆哀惜は今思い出しても心が痛み涙が溢れてくる。私も軍国少年として育った世代、自分一人何故おめおめと生き返ったかという自責が、心の澱となっている。
(「まるえむ 24」江商社友会1994 p16 鈴木康平)